醤油の健康効果
醤油の特性・醤油に含まれる健康成分
日本の伝統的な発酵食品の中には多くの秘められたパワーが存在します。欧米型の食生活と健康指針が日本に導入されてから、現代栄養学によって醤油は塩分を多く含む食品のひとつと言われ、偏った知識から生活習慣病をもたらし、健康に良くないと思われてきました。
しかし、近年の研究で日本の伝統食や発酵醸造食品の醤油のさまざまな有効成分が明らかになりました。日本料理とともに発達した日本独自の発酵調味料である醤油の摂り方しだいでは、人の健康維持・増進や疾病の予防につながる食品(調味料)ということが解明されつつあります。
現在、日本だけでなく欧米においても高齢化社会に入り、健康志向の高まりから、ラードやバターなど動物性の油脂を使う調味料に代わる味つけとして注目されつつあるのが日本の発酵を利用した調味料です。日本の伝統的な和食が生活習慣病の予防に良いと見直されてきているのです。
生体調節機能
●食欲増進作用
しょうゆは食物の味や香りをひきたてるだけでなく、胃液の分泌を促し、消化・吸収を助け食欲を増進させる働きがあります。
群馬大学の研究によると、患者の胃液を検査する際に、通常使用するカフェイン溶液の代わりに「お澄まし」の濃度に薄めた本醸造醤油を飲ませたところ、通常以上に多量の胃液が採取できたということが報告されています。
●殺菌作用
昔から魚や肉をしょうゆに浸して保存する知恵が伝えられています。これはしょうゆに強い殺菌力があることを、人々が体験的に知っていたのだと思われます。この殺菌作用を利用したものがマグロのづけや福神漬けです。
醤油には殺菌効果があることもよく知られています。高濃度の食塩や乳酸による酸性pH,アルコールなどの作用によって、例えば大腸菌などは、室温30℃の条件下で9日で検出限界以下となります。しょうゆが間接的にでも食中毒を防ぐ働きがあることは事実のようです。
●ビタミン破壊抑制作用
野菜を炒めたり煮たりすると、せっかくのビタミン類が壊されてしまう、とよくいわれますが、その煮物をしょうゆで味つけすると、材料のビタミンB1がそれほど壊されず、安定していることが実験でわかりました。これはしょうゆに含まれるアミノ酸の作用によるものと考えられています。
また、しょうゆにはビタミンC酸化酵素(ビタミンCを酸化型ビタミンCに変え、その効果を台無しにしてしまう酵素)の働きを抑制する力もあります。
●抗酸化作用
しょうゆは油脂(リノール酸)に対して強い抗酸化作用を示すことが知られています。酸化防止作用があるということは、食品の保存性や安定性を高めることにつながり、さらには老化や成人病の予防にも役立つ可能性がある、ということにもなります。
●抗腫瘍作用(制がん作用)
しょうゆの持つ抗酸化作用の延長線上には、抗腫瘍作用(制がん作用)もあることがわかりました。しょうゆの中の胃ガンを抑える物質について
研究を続けたところ、それは主な香り成分のひとつであるHEMFであることが明らかにされたのです。
醤油の香りの成分は、現在確認されているものだけも約300種類あるそうです。そして、その中でも、HEMFというフラノン化合物(甘い香り、です)が代表的なもので、本醸造醤油の香りの主成分となります。このHEMFという成分は、醤油の原料である大豆や小麦には含まれておらず、醤油の醸造過程でつくられる成分で、実験によると胃ガン発生率が、およそ3分の1に抑えられたという報告もあるようです。
●血圧降下作用
しょうゆに、実は血圧を下げるヒスタミン吸収促進成分が含まれていることはあまり知られていません。様々な実験の結果、血圧を下げる物質がしょうゆの中に含まれていることが確認されました。
他にも、血圧の上昇を阻害する物質の一種で、大豆に由来するニコチアナミンという物質が、含まれていることも確認されました。
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醤油を犬に2~4cc/kg(犬の体重を3kg とすると6~12cc)与えると、約一分後から急激に血圧が20~80mmHg・20~66%低下し、30 分~1 時間持続後正常に復帰するという実験があります。胃壁の血液量も増加し、食欲の増進が見られます。
これは、イソフラボン等が多量にあるからですが、特筆すべきは、3 年前に発見されたイソフラボンが醸造中に変化し酒石酸誘導体になった、醤油フラボンが強い抗ヒスタミン性(アンギオテンシンⅠ変換酵素(ACE)の阻害能)を持っているからです。醤油フラボンは抗酸化性や抗腫瘍性も強いものですが、これは醤油、味噌以外の自然界には存在せず、大豆を原料とした醸造物のみに存在するものです。お茶に含まれるカテキン(これもフラボン類です。)同様、他の薬品のような毒性がありません。
参考/キッコーマンしょうゆ博物館、筑波大学「食のコラム」、大徳醤油株式会社、他 入選作品
ギャバは主に人間の脳内に微量に存在する抑制性の神経伝達物質です。ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどは、それぞれの持つ役割を神経細胞の興奮を高める事で伝える、興奮性の神経物質である一方、 ギャバはその刺激が伝わらないように神経細胞の興奮を抑える、抑制性の神経伝達物質です。 今では、精神安定剤などの不安を抑えてくれる薬の多くに、この ギャバの働きを強める成分が使われています。
ギャバには、精神安定作用及び血圧低下作用。そして、脳の血流を改善し、脳代謝を活性化する働きがあることから、アルツハイマーや記憶力の向上などにも効果的とされています。また、肝機能を向上させることで、中性脂肪による肥満を防止するなどが報告されています。
大豆ペプチドは大豆発酵食品に含まれており、大豆のたん白質が酵素分解することで得られる成分です。
大豆ペプチドのペプチドとは、たん白質がアミノ酸として分解吸収される一歩手前の分子結合のことで、たん白質とアミノ酸の中間に位置するものです。その為、効能はアミノ酸のものと似ているのですが、違いは吸収スピードの速さ、つまり即効性です。アミノ酸は1個づつ吸収されるのに対し、ペプチドは一気に複数まとめて吸収されるのがその理由です。
大豆ペプチドの期待できる効能としては、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やしたり、エネルギー代謝促進、脂肪燃焼促進といったダイエット面に効果的な作用があると言われています。その他に大豆ペプチドは筋肉の損傷を防ぎ、さらに損傷した場合もすばやく修復といった筋肉疲労の予防や筋肉の増強など運動能力を増強する効果も注目されています。さらに大豆ペプチドはアンジオテンシンというホルモンを作る酵素の働きを阻害するため、血圧上昇も抑制する働きがあると言われています。
出典/参考
健康マトリックス http://kenko.it-lab.com/ 、他