NPO日本綜合医学会小論文部門 優秀賞受賞論文日本人と米

平成24年度 NPO日本綜合医学会小論文部門 優秀賞受賞論文

 

日本人と米

 日の丸人は骨と肉と皮と・・・・から出来ていますが魂があって初めて1人の人間としての生命があります。私は、日本人の肉体と魂(大和魂)のルーツは共に米にあると思います。

 

FIFA女子ワールドカップサッカー優勝の瞬間、「和の力が世界を制した記念すべき一瞬です」と解説者は叫んでいました。自身サッカー少年だったので、PKが決まった時(真の米の国が、米国に勝利)は、おもわず感動の涙が溢れました。なでしこチームには、国民栄誉賞が授与されましたが、祖国日本、そして日の丸を意識した応援は、震災後の大きな力になったと思います。米は、日本の食の中心であることはいうまでもありませんが、米作りを通じて日本人が築き上げた精神文化、それはまさに日本人の血潮に脈々と受け継がれてきた大和魂にあると思います。最高殊勲選手、澤穂希さん(穂希という由来は、生まれた年に米が不作だったから、お米がいっぱい取れますようにとの願いを込めてお父さんが名付けたそうです。)がお祝は、おいしいお寿司屋さんがいいとのインタビューも目にしました。日本人は身も心も、米によって育まれ、米を粗末に扱えば、日本の文化は衰退し、日本人がいなくなってしまう。・・・・今、日本は未曽有の困難に直面していますが、これを救う選択肢は、只一つ、日本人の身と心は米国から学ぶのではなく、お米から学べばいいのです。

 

日本人は農耕民族(米は、日本の宝)稲

「豊葦原瑞穂の国」日本書紀に記されている日本の古称です。葦の生茂る湿地帯にたわわに実る稲穂。日本神話によれば「天照大神が稲穂をその子ホノニニギノミコトに与えて、この国に降り立った」とあります。聖徳太子が制定した憲法に「和を以って尊しとなす」という条文がありますが、日本人は元来農耕民族であり、田植えや稲作を共同ですることによって集落も形成されたのです。そして「結=ゆい」と呼ばれるような、村単位の約束事によって、互いに助け合い、譲り合いの精神「和」が生まれたのです。

天皇陛下は、今日変わらずあるのは、稲作の祭司であるという点です。御田植、稲刈り、新嘗祭、神嘗祭などの行事を通じて、以って日本の平和と国民の繁栄を祈願してきました。天皇陛下は、日本人の心のよりどころとして今なお、熱い信頼で結ばれています。すべての国民から尊敬されるのは、国家国民の為、お心を置いて生活されているからに他なりません。

国技大相撲も、米と密接に関わっています。「同じ釜の飯を食う」という言葉がありますが、相撲道は単に勝ち負けではなく、一所懸命相撲を取って勝敗がつけば、たとえ負けても礼を尽くすことが求められています。土俵の中央には「洗米、勝栗、昆布、スルメ、清め塩、かやの実」が埋められ、土俵は小俵で作られています。相撲の起源は、古事記や日本書紀に遡ります。相撲は、単に勝ち星数ではなく、日本人の心を引きつけてやまない「相撲道(和・絆)」があるからこそ、こんなにも、万人に愛されるのです。

 日本の自然は、豊富な水資源と美しい四季に恵まれ、稲作に最も適した環境が整っています。20118月、震災後初めて秋田竿灯を見に車を走らせました。途中目にした東北地方の田圃には、遠くの山のふもとまで青々と茂った元気な稲が波打ち、その光景に心のやすらぎを感じました。竿灯祭りは、日本を代表する祭りですが、この様は稲が成長し、やがて稲穂が頭を垂れる(竿灯の根もとに竹を継ぎ足して大空に提灯がしなって)五穀豊穣祈願を表しています。秋、稲束を乾すボッチは各地で重ね方が違いますが、それは日本の原風景であり、日本人なら誰もが美しいと感動する景色ではないでしょうか?

子供の躾は、ごはん通して両親から教えられました。「いただきます」の感謝の心、食事のマナーとしての箸の使い方、親に対する礼儀作法、姿勢、すべて家族団欒から学びました。お茶碗にご飯粒が残っていれば、母がつかさず、お百姓さんは米1粒つくるのにどれだけ時間と愛情をたむけているのかわかるの?子供は、だまってきれいに食べる。そのようなことが、きちんとできれば、現代に多発する子が親に刃物を向けるなんで考えられません。今、日本料理を、世界遺産に登録しようとその準備が進められているとの事ですが、日本人の営みすべてに、米無くして成り立ちません。

 

日本日本人の主食=米

 日本は米国の原爆によって、ピカット数多くの人命が奪われましたが、戦後は米国の食糧政策によって、ジワット数多くの人命が奪われつつあります。(猛省すべきは、政府の食糧政策の誤り)生活習慣病は急増し、国民医療費は34兆円を超えました。そして、人口は自然減少し、農業人口は激減しています。今、減反で田は荒れ果て、必要のない米まで輸入させられています。もう、昔のままの農業形態では、誰が考えても生活が安定し安心して米作りに励むことは難しく、取り巻く問題は山積しています。だからと言って他国の食文化をこのまま野放しにすれば、日本人の健康だけでなく、誇りまでもが骨抜きにされてしまうのではないでしょうか?戦後、米国は小麦や動物性たんぱく質を日本に大量輸出し、そのお陰で日本人の平均寿命は延び食生活も大幅に豊かになりました。食糧支援はありがたいことですが、冷静に考えれば外貨獲得の為に余剰な食糧を放出したに過ぎません。一昨年、ロシアは小麦不作になって、日本への小麦輸出を制限しました。これは、しごく当然のことで、日本の食(食糧)は日本人にしか、守れません。日本の食糧自給率は39%(カロリーベース)どんなに冷凍技術や輸送手段が向上しても、輸入食品はフードマイレージリスク(鮮度、コスト等)が増します。一見、暮らし向きが豊かになっても、必ずしも幸福や健康には結び付きません。「食戦」という言葉がありますが、自給率は低くなれば、有事の際(尖閣諸島や北方4島は実効支配され緊張が高まっています。)食べ物が不足し、兵糧攻めで、争う気力さえ失せてしまいます。歴史を遡れば、生産力が高く貯蔵性もある米は、常に支配者に管理され、小作人は米を作っても食べられない時代も長く続きました。小作人は飢餓に怯えながら、わずかの雑穀や粗食を強いられたのです。今。普通におこめを、食べられることにもっと感謝すべきだと思います。

 

 日本の風土にあったフードが、日本人には一番です。日本の国土はナトロン塩の多い土地柄で、肉類を食べなくても健康上差し支えないばかりか、むしろ食べない方が良いとされています。(肉を食べるようになった歴史を調べれば、ほんの少し前、一般庶民が肉を手軽に買えるのは100年も経っていない。)腸の構造やその他の内臓機能を調べても、日本人は毎日乳製品や肉を食べる構造に適していません。動物性たんぱく質を多く食べる日本人の腸相は汚れ、大腸にポケットができることが確認されています。つまり欧米型食生活に、日本人の体は「NO」と悲鳴をあげているのです。マグガバンレポート以降、日本食が世界の注目を集めています。日本人が、このままの食生活を改善しなければ、地球温暖化で地球環境がおかしくなる前に日本人は滅びてしまうのではないでしょうか?日本人の健康の原点は、自然に学び、歴史に学び、素直にそれを受け入れることにあります。それは、先人達が大切に育んできた米中心の暮らしに立ち返ることではないでしょうか?今、日本は、世界各地からおいしいものを輸入する一方で冷蔵庫から直接ゴミ箱に廃棄される食品も増えています。飽食の宴たけなわで、自分達に不都合な真実には触れないように、生活を謳歌していますが、こんな時代が長く続くことはありえません。子孫に、この美しい日本をより美しくして後世に伝えることは、今を生きる私たちに課せられた義務だと思います。自国の主食とは何か?そして、主食の国内生産と安全性をどう確保するか?これは、国家の最も基本問題でもっと真剣にもっともっと議論されるべきではないでしょうか?

 

まとめ

現象界すべてにわたって
易(かわ)るものと易(かわ)らぬものがあります。はるか古代中国の「易経」の中に易不易という言葉があります。激しく移り変わる世の中にあって、変わらなければいけないことは即刻変えなければいけないし、変えてはいけないものは絶対に変えてはならないのです。添加物の許認可基準や食品に関する法律は、たとえ一度認可されたものでものであっても、新たな技術や研究によって人体への危険性が危惧される場合は直ちに変える(中止)べきですが、日本人の食の基本概念は、お米(玄米)を中心とした日本伝統食であり、これは、絶対に変えてはいけないのです。長御食、遠御食という語があります。先祖代々長く続いた食べ物は、ただそれだけで正しいのです。私は「道は近きにある、然るに、これを遠くに求む。事は易きにあり、然るに、これを難きに求む。」という言葉を大切にしたいと思います。

 

今の日本を思う時、私はあのタイタニック号に悲劇を思い出さざると得ません。日本は周りを海に囲まれたさながら日本丸です。揺れながらも(大地震)キャプテン(首相)がころころ変わっても今までは、なんとなく大海に漂っていることができました。しかし、これからも揺れて沈まずの保証はありません。当時の最新鋭の技術で建造されたタイタニック号は、処置が遅れ、大氷山に衝突し、あえなく真っ二つに割れて海の藻屑になってしまいました。今、官民一体になって、「食育」に力を結集しなければもう間に合わないかも知れない。・・日本人が日本人である続ける為に、米を大切にしなければ生き残れません??    がんばっべ東北。がんばろう日本。  三橋敏次