小麦戦略(パンの国ジャパン)
お米を食べていたはずの日本で
9割を輸入に頼る小麦がシェアを伸ばしている。
国産の小麦が勢力を伸ばしているのなら
トマトが17世紀半ばに日本に伝わり
今や日本でも定番の野菜となった事実もあるので、まだわかる。
しかし、日本では産出できない強力小麦(硬質小麦)から作られるパンが
定着してきたことは不思議なことである。
日本の将来の農業のことはもちろん
食養生の「身土不二」の観点からも
実は、これはとても重要な問題ではないだろうか。
このような疑問に対して
「戦後のアメリカの陰謀」だと、よく言われる。
確かにその通りであり、その歴史的事実や詳細を
この本を読むとよくわかる。
アメリカでは第一次世界大戦時はヨーロッパ戦線へ
第二次世界大戦時はヨーロッパに加えアジア戦線への兵糧を提供するため
安価で大量の農産物を規模を拡大して生産してきた。
この拡大路線は過剰在庫のリスクがある。
戦後のヨーロッパで農業復興が進み、朝鮮戦争が1953年に終結すると
大量のアメリカ農産物は行き場を失った。
しかも1953・54年は世界的に小麦の大豊作!
政治的に有効だった農産物という資産は
政府が借りる倉庫代だけで一日二億円という金食い虫に変わり
しかも、農産物は消費しないと傷んでくるので
時間とともにムダに消えていく資産でもある。
大量の余剰農産物の処理は
1953年に就任したアイゼンハワー大統領の最優先課題となり
MSAを改定し、PL四八〇法案(通称、余剰農産物処理法。
正式名称、農業貿易促進援助法Agriculture Trade Development and Assistance Act)を
アメリカ第八三議会で成立させ、余剰農産物処理をさらに協力に推し進める作戦に出た。
私も過去のサラリーマン時代に
商品の物流や販売に関わった経験があるが
販路の新規開拓はそう簡単ではない。
米食の日本に売るとなると
小麦粉を探している人に売るのではなく
認知や需要開拓から始めなければならない。
しかも戦後の日本はお金もない。
PL四八〇法案の骨子はそんな心配を打破する
買う側にとっても魅力的な下記のような内容となっている。
一、アメリカ農産物をドルでなく、その国の通貨で購入でき、しかも代金は後払い(長期借款)でよい。
二、その国の政府がアメリカから代金後払いで受け入れた農産物を、その国で民間に売却した代金(見返り資金)の一部は、事前にアメリカと協議のうえ経済復興につかえる。
三、見返り資金の一部は、アメリカがその国での現地調達などの目的のほか、アメリカ農産物の宣伝、市場開拓費として自由に使える。
四、アメリカ農産物の貧困層への援助、災害救済援助及び学校給食への無償贈与も可能である。
【斜文字は引用】
日本政府も、「後払いでよく、売った金で経済復興ができるのならお得やん♪
日本の農業復興が進むまでのつなぎとして何でもいいから買いましょう。
(何でもいいというと小麦に失礼ですが)」
と考えたのかもしれない。
しかし、世の中でサンプリングという営業戦略が成り立っているように
一度ライフスタイルに取り込んでしまうと余計なコストと知りながらも使い続けてしまう。
最初は小麦が欲しくて買っていたわけではなくても
いつのまにか小麦を当たり前に求めてしまっている。
20年ほど前までは携帯電話なんてなくても、みんな健康に暮らしていた
便利やんと使い始めたら、いつの間にやら</span >
たいして電話などかかってこなくても
手元に常にないと不安になるほど依存してしまっている。
今の時代はどんどんお金のかかるものが増え続けている。
本来、生きるために便利な道具を手に入れてきたはずが
いつのまにやら、うまいこと「それも必要」と思い込まされ
便利グッツを買うお金を稼ぐために働くような
働く目的がおかしなことになってしまっている人も多いのではないだろうか。
食に関しても同じである。
近くの農家が作っている米や野菜を食べずに
海外から大量の輸送エネルギーを使い輸入されてきた農作物を食べるということに
何の疑問も持たなくなった。
日本人として、これでいいのだろうか。
話はそれてきたが、同書では
アメリカがいかにたくみに日本の政府や各省の外郭団体を
有効活用しながらお金をかけ、長期的な視野で
営業活動をしてきたかが紹介されている。
「アメリカ小麦戦略」で実行された事業は、日本側と入念な協議を重ね、日本側が納得、了承した上で契約書を交わし、それに基づいて行われたのである。例えば昭和三一~三二年、厚生省の外郭団体(財)日本食生活協会はキッチンカーの製造・運行に要する第一期分の費用六八四〇万円をアメリカ側から受け取り、日本側が製造・運行するという契約を交わしている。この事業推進のために急遽、(財)日本食生活協会が設立され、アメリカ側はオレゴン小麦栽培者連盟という民間同士で契約を交わすという形になり、日米ともに政府は表に出なかった。
同じく農林省の外郭団体(財)全国食生活改善協会は、オレゴン小麦栽培者連盟と三八八二万円で製パン技術者講習会事業を契約、二二四四万円で生活改良普及員研修事業、七三三〇万円で粉食奨励の広告宣伝事業を請け負い、文部省の外郭団体(財)日本学校給食会は、オレゴン小麦栽培者連盟と五七三五万円で学校給食の農村普及拡大事業を請け負っている。
余剰農産物は待ってくれない。
政府間取引だと決済に時間がかかるので
表立ってはオレゴン小麦栽培連盟と外郭団体との
民間同士の取引として速やかに進めていたようだ。
キッチンカーのスポンサーであるアメリカは全ての費用を負担する条件として必ず食材に小麦と大豆を使うこととした。それまでの「ご飯に味噌汁、漬物」という日本人の伝統的な食生活を欧米型に転換させる大きな原動力となった。アメリカの戦略は50数年後の現在をみてわかるように大成功となった。
キッチンカーによる「栄養改善運動」はアメリカの栄養改善になっただろうが、日本人の健康には果たしてどんな効果があったのだろうか。
同書がおもしろいのは
日本人の主食である米にもフォーカスを当て
「脚気論争」や「主食論争」の歴史的事実、それに
戦後「栄養改善」という名のもとに一気に大転換してきた
日本の食文化などが詳しく紹介されている。
脚気論争はとてもおもしろい内容なので
別途こちらに書く予定である。
私は「日本の食文化(みんなが幸せになれるような)を変える」
ために食事療法士として活動している。
最近の食は「口」としては刹那的に幸せを得られるだろう。
しかし身体が求めている食物がどうれほど周りにあるだろうか。
科学や医学は進んでいるのに
平成24年度の国民医療費は39兆2,117億円で前年比1.6%増加という。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/12/dl/kekka.pdf
人口一人当たりの国民医療費は30万7,500円となる。
なんだか一ヶ月は医療費のためだけに働いているような世の中に感じる。
冷静に考えるとおかしなことでも
資本主義でお金中心の世の中では、医療費の増加も
経済活動の活性要因として歓迎されてしまうこともある。
食文化を変えるというとおこがましいしが何とかしたい。
戦前の日本に戻すことは求めていない。
今の現状にあったいい方向転換ができれば嬉しい。
地道に食養生を広げる活動をしているが
アメリカのように余剰農産物やお金といった武器がないので
微力な自分に何ができるか常に模索している。
うっかりこの文章を読んでしまった人に
何かいい案があれば是非教えていただきたい。
よろしくお願いします。
JUGEMテーマ:健康
「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活 鈴木猛夫 藤原書店
お米を食べていたはずの日本で
9割を輸入に頼る小麦がシェアを伸ばしている。
国産の小麦が勢力を伸ばしているのなら
トマトが17世紀半ばに日本に伝わり
今や日本でも定番の野菜となった事実もあるので、まだわかる。
しかし、日本では産出できない強力小麦(硬質小麦)から作られるパンが
定着してきたことは不思議なことである。
日本の将来の農業のことはもちろん
食養生の「身土不二」の観点からも
実は、これはとても重要な問題ではないだろうか。
このような疑問に対して
「戦後のアメリカの陰謀」だと、よく言われる。
確かにその通りであり、その歴史的事実や詳細を
この本を読むとよくわかる。
アメリカでは第一次世界大戦時はヨーロッパ戦線へ
第二次世界大戦時はヨーロッパに加えアジア戦線への兵糧を提供するため
安価で大量の農産物を規模を拡大して生産してきた。
この拡大路線は過剰在庫のリスクがある。
戦後のヨーロッパで農業復興が進み、朝鮮戦争が1953年に終結すると
大量のアメリカ農産物は行き場を失った。
しかも1953・54年は世界的に小麦の大豊作!
政治的に有効だった農産物という資産は
政府が借りる倉庫代だけで一日二億円という金食い虫に変わり
しかも、農産物は消費しないと傷んでくるので
時間とともにムダに消えていく資産でもある。
大量の余剰農産物の処理は
1953年に就任したアイゼンハワー大統領の最優先課題となり
MSAを改定し、PL四八〇法案(通称、余剰農産物処理法。
正式名称、農業貿易促進援助法Agriculture Trade Development and Assistance Act)を
アメリカ第八三議会で成立させ、余剰農産物処理をさらに協力に推し進める作戦に出た。
私も過去のサラリーマン時代に
商品の物流や販売に関わった経験があるが
販路の新規開拓はそう簡単ではない。
米食の日本に売るとなると
小麦粉を探している人に売るのではなく
認知や需要開拓から始めなければならない。
しかも戦後の日本はお金もない。
PL四八〇法案の骨子はそんな心配を打破する
買う側にとっても魅力的な下記のような内容となっている。
一、アメリカ農産物をドルでなく、その国の通貨で購入でき、しかも代金は後払い(長期借款)でよい。
二、その国の政府がアメリカから代金後払いで受け入れた農産物を、その国で民間に売却した代金(見返り資金)の一部は、事前にアメリカと協議のうえ経済復興につかえる。
三、見返り資金の一部は、アメリカがその国での現地調達などの目的のほか、アメリカ農産物の宣伝、市場開拓費として自由に使える。
四、アメリカ農産物の貧困層への援助、災害救済援助及び学校給食への無償贈与も可能である。
【斜文字は引用】
日本政府も、「後払いでよく、売った金で経済復興ができるのならお得やん♪
日本の農業復興が進むまでのつなぎとして何でもいいから買いましょう。
(何でもいいというと小麦に失礼ですが)」
と考えたのかもしれない。
しかし、世の中でサンプリングという営業戦略が成り立っているように
一度ライフスタイルに取り込んでしまうと余計なコストと知りながらも使い続けてしまう。
最初は小麦が欲しくて買っていたわけではなくても
いつのまにか小麦を当たり前に求めてしまっている。
20年ほど前までは携帯電話なんてなくても、みんな健康に暮らしていた
便利やんと使い始めたら、いつの間にやら
たいして電話などかかってこなくても
手元に常にないと不安になるほど依存してしまっている。
今の時代はどんどんお金のかかるものが増え続けている。
本来、生きるために便利な道具を手に入れてきたはずが
いつのまにやら、うまいこと「それも必要」と思い込まされ
便利グッツを買うお金を稼ぐために働くような
働く目的がおかしなことになってしまっている人も多いのではないだろうか。
食に関しても同じである。
近くの農家が作っている米や野菜を食べずに
海外から大量の輸送エネルギーを使い輸入されてきた農作物を食べるということに
何の疑問も持たなくなった。
日本人として、これでいいのだろうか。
話はそれてきたが、同書では
アメリカがいかにたくみに日本の政府や各省の外郭団体を
有効活用しながらお金をかけ、長期的な視野で
営業活動をしてきたかが紹介されている。
「アメリカ小麦戦略」で実行された事業は、日本側と入念な協議を重ね、日本側が納得、了承した上で契約書を交わし、それに基づいて行われたのである。例えば昭和三一~三二年、厚生省の外郭団体(財)日本食生活協会はキッチンカーの製造・運行に要する第一期分の費用六八四〇万円をアメリカ側から受け取り、日本側が製造・運行するという契約を交わしている。この事業推進のために急遽、(財)日本食生活協会が設立され、アメリカ側はオレゴン小麦栽培者連盟という民間同士で契約を交わすという形になり、日米ともに政府は表に出なかった。
同じく農林省の外郭団体(財)全国食生活改善協会は、オレゴン小麦栽培者連盟と三八八二万円で製パン技術者講習会事業を契約、二二四四万円で生活改良普及員研修事業、七三三〇万円で粉食奨励の広告宣伝事業を請け負い、文部省の外郭団体(財)日本学校給食会は、オレゴン小麦栽培者連盟と五七三五万円で学校給食の農村普及拡大事業を請け負っている。
余剰農産物は待ってくれない。
政府間取引だと決済に時間がかかるので
表立ってはオレゴン小麦栽培連盟と外郭団体との
民間同士の取引として速やかに進めていたようだ。
キッチンカーのスポンサーであるアメリカは全ての費用を負担する条件として必ず食材に小麦と大豆を使うこととした。それまでの「ご飯に味噌汁、漬物」という日本人の伝統的な食生活を欧米型に転換させる大きな原動力となった。アメリカの戦略は50数年後の現在をみてわかるように大成功となった。
キッチンカーによる「栄養改善運動」はアメリカの栄養改善になっただろうが、日本人の健康には果たしてどんな効果があったのだろうか。
同書がおもしろいのは
日本人の主食である米にもフォーカスを当て
「脚気論争」や「主食論争」の歴史的事実、それに
戦後「栄養改善」という名のもとに一気に大転換してきた
日本の食文化などが詳しく紹介されている。
脚気論争はとてもおもしろい内容なので
別途こちらに書く予定である。
私は「日本の食文化(みんなが幸せになれるような)を変える」
ために食事療法士として活動している。
最近の食は「口」としては刹那的に幸せを得られるだろう。
しかし身体が求めている食物がどうれほど周りにあるだろうか。
科学や医学は進んでいるのに
平成24年度の国民医療費は39兆2,117億円で前年比1.6%増加という。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/12/dl/kekka.pdf
人口一人当たりの国民医療費は30万7,500円となる。
なんだか一ヶ月は医療費のためだけに働いているような世の中に感じる。
冷静に考えるとおかしなことでも
資本主義でお金中心の世の中では、医療費の増加も
経済活動の活性要因として歓迎されてしまうこともある。
食文化を変えるというとおこがましいしが何とかしたい。
戦前の日本に戻すことは求めていない。
今の現状にあったいい方向転換ができれば嬉しい。
地道に食養生を広げる活動をしているが
アメリカのように余剰農産物やお金といった武器がないので
微力な自分に何ができるか常に模索している。
うっかりこの文章を読んでしまった人に
何かいい案があれば是非教えていただきたい。
よろしくお願いします。
JUGEMテーマ:健康