岩崎輝明 寄稿
癌、心疾患、脳卒中の三大生活習慣病をはじめとし、今や国民病となった糖尿病は予備軍を含め年間50マン人づつの増加で1620万人、と激増しています。そして、その数4千万人と言われる高血圧、薬物治療を受けている患者は700万人です、更にこれらとリンクするメタボリック症候群など、まさに生活習慣病大国と化した日本国民のあり様です。
年間の国家予算は80兆円で、国家の年間税収が増加し50兆円としても、不足の30兆円は国債を募り、更に国の借金を増しているのです。こうした財政の中、平成17年度の医療費は32兆円であります。これに介護費5.5兆円を加えると年間37・5兆円となり、年間収入50兆円に対し、年間医療費37.5兆円と比較すると、何と国家の税収の70%強が医療費という莫大な額であります。もちろん、37.5兆円の税からの支払いは3分の1健保から3分の1あとの3分の1は患者の自己負担というのが大まかではありますが医療費の分担です。
医療費は、更に年間増加を辿り、社会保険庁の予想では10年後には現在の3倍と予想しています。少子高齢化に直面し、40歳以上74歳 迄のメタボリック症候群が25%、さらに予備軍までいれると51%になっている現状です。このままの状態が続きますと、我が国はさらに病的社会が増し、心身ともに異常な社会そになるでしょう。また、医療費のさらなる増加で国の財政も危うくなると思います。それらを防ぎ、健全な社会を作るために、ここに陽明学者であられた安岡正篤先生の考察の三原則を用いて考えてみます。
{考察の三原則}
1.枝葉に囚われず、根本的に視る
2.一面のみを見ず、多面的に視る
3・短期的に視ず、長期的に視る
これらを考察しますと、現代医学にある人間の体はそれぞれの部分によって出来上がっているという人間機械論ですが、そうではなく、部分はあくまでも体全体の一部にすぎないという、眼も鼻も耳も皮膚も胃も肝も腎も単独で存在するのではなく、それぞれが互いに関連し全体が合わさって一つ体であるという見方です。即ち万病一元論です。ですから健康な体を作り、健康な血液を生む【食を正しく改善する」ということです。
更に人の健康を多面的に考察しますと、氣はこころと申しますが”精神の安定”がかかせません。次に人に良いと書いて食と読む様に、人は食の化身あるいは自然の申し子とも称されるとおり。”食は命と健康の基”であります。”更に適度な運動、そして安眠、正しい排便”などトータルで健全かどうか健康の原則ではないでしょうか。
少子高齢化の社会を迎え、これらの健康問題を長期的に考えてゆきますと、例えば高血圧の方が生涯薬を飲み続けるといった生活習慣病に対し、一時的な対処療法に頼るのではなく、本会の示すところの未病を治すという食事改善を中心とする予防医学に努めてゆかねばなりません。医は仁術であって金術ではないのです。
”自然は自然に流れ、不自然は不自然に流れず”というようにさらに無理が通れば、道理がひっこむように大自然の流れに逆らうことのなきよう努めたいものです。
本学会は一世紀以前から食医学を始められた石塚左玄先生が源流となっています。そして、昭和29年、二木謙三博士や沼田勇博士によって創設されました。こうした先人が築いてきた、未病を治す食医学という伝統と歴史を引き継ぎ、さらに心身ともに健康な人づくり、社会づくり、国づくりに力を合わせて取り組んでゆきたいと念願しております。
安岡正篤の言として、西洋の学問は枝葉末節を掘り下げてゆく結果、末節のもつ焦燥感が出てくる。東洋の学問は物事の根や幹にさかのぼるものであって掘り下げる程心が安らいでいくと解説しています。
安岡正篤先生の幸福の三原則
1.心に喜神を含む
2.感謝の心をもつ
3.陰徳を志す
理念
大自然の法則および摂理に従う中で、人々が本来もっているホメオスターチス(体の恒常性)が常に健全に機能し、各々の健康が保たれるための資源環境を重視すると共に、未病医学および医、食、農の研究促進、啓蒙、普及を使命とし、人類の幸福と世界の平和に貢献する
運営方針
国民の心身の健康と幸福に、そして平和で安全な社会づくりを第一義とし、道徳と経済の両立を計り、且つ怒り(思いやり)の精神を礎とする。 月間綜合医学NO,236より