フグの肝をたべたい

猛毒のフグの肝を食べたい。と言っても生をたべれば、猛毒で苦しみ死ぬことはわかっている。山懐に抱かれた村でおいしい魚がたべてみたい。遠くは、室町時代から、日本人は、独自の食文化を作り上げてきた。今のように毒の検出やデータが、取れない時代に。試行錯誤を繰り返しながら、粕漬、味噌漬けなどの発酵の力を借りて保存の利く、しかもおいしい食品にかえてきた。

 

驚くべきは先人の食への執念。
猛毒フグの卵巣を美味へと変えた貪欲なまでの探求心。フグの腹にたっぷり詰まった、ふくふくとしたフグの子、さっと炊いたらさぞかし旨いだろう、けれどもそれは猛毒、食べられない。ああ捨てるには惜しい。命も惜しい。

猛毒フグの卵巣を三年漬けて、天下の珍味に。子も身も味わい尽くす伝統の味技。

糠漬樽

塩で漬け、糠で漬けて三年、猛毒は天下の美味へと変身した。そのまま薄切りにして酢や酒をたらす。濃く深く豊か、塩気もきついが発酵食品ならではのたっぷりとした旨みがある。

ふぐの子