一杯のコーヒーから

今から40年も前、働きはじめて退職するまで約12年JR代々木駅前のTOMという喫茶店でよく会社仲間とコーヒーを飲んだ。私の一番のお気に入りは10センチ位の小ぶりの透明なグラスに濃いめのアイスコーヒーを注ぎその上にミルクをのせたおしゃれなカフェトムとお店の名前のついたアイスコーヒー。

  ここのオリジナル珈琲でこの店では決まってこれを注文した。あれから、30年ぶりに先週その店に立ち寄った。周りは随分変わった景色になったけれどその店だけはどこもかしこもそのまんま。今週もそのお店に行くことができた。

ただし、お店は息子さんの代にかわっている。私は、カフェトムの名前を思い出せず、メニューにも載っていない。あれこれ、説明してやっとその名前にたどり着いた。カウンター越しにマスターが作ってみましょうか?と声をかけてくれた。私は、期待したが、すぐさまダメ出しがお母さんから出されて幻に。お母さんは、普段作っていないものを、即座にお客さまに出せるようなものは作れないと息子に諭した。今はアイスカプチーノがおすすめといわれた頼んだ。しばらく、お母さんと昔話をしていたら、昔ながらのトムがプレゼントされた。そうそうこんな味。こんな味といういい方は失礼だけれど、透明の器や感じが少し違う。でも、すごくおいしいし、作ってくださったことに感謝がいっぱいになった。急に40年まえにタイムスリップしたような幸せ感。

お母さんは、ご主人が丹精込めた作られたカフェトムは息子にはまだ作れない。そんな感じだった。

思わず御主人の、うれしそうな顔が浮かんだ

一杯のコーヒーで、こんなに心豊かになれる至福の時、感謝。

お金があれば、1万おいてく、けどないからこれで。気持ちだけでも受け取ってもらえてどっちも満足

(三橋 敏次)

 

 

 

前の記事

祈り今を切る